インタビュー01 広島大学教授 長沼 毅

無人航空機の可能性について

私は地球上の過酷な環境に住んでいる生きものの研究をしています。過酷な環境とは、ものすごい水圧の深海、有毒ガスが噴きだす火山、極寒の南極、灼熱の砂漠などなど、人間がとても住めないようなところです。

そういうところを調査するには、たとえば深海なら潜水船に乗って行くことになります。ところが、有人潜水船に乗るのは競争率が高いし、もし乗れたとしても水中にいられるのは8時間ほど。それで、私たちはしばしば無人探査機(ROV)を使います。

無人機ROVは言ってみれば深海ロボットのようなもの。もちろん、船上で人間(パイロット)が操縦するのですが、連日の潜っても文句言わないし、一日の間に何度潜ってもヘタれません(パイロットは‘疲れる’と言ってましたが)。

そして、海底火山や海底の割れ目など、有人潜水船で近づくにはちょっと怖いところにも、ROVなら行ってサンプリングすることもできるのが、私たちにはうれしいです。

そういう経験を通して私は、火山や砂漠や南極でも無人機が使えたらいいのに、と何度も思いました。それは水中機ではなく航空機であることは当然です。人間が近づけないようなところでも、無人航空機からいろいろな計測や撮影をしたり、あわよくばサンプリングもしたりと、夢は広がります。でも、夢は夢、とても実現できないだろうと思っていました。

ところが、あったのですね、私の夢をかなえてくれそうな無人航空機「UAV」が!これを使って、私の調査の幅が広がり、研究に深みがでてくる。私はUAVにそんな期待をかけています。

長沼 毅

科学界のインディ・ジョーンズ
日本の生物学者。広島大学教授。
専門は、生物海洋学、微生物生態学、極地・辺境等の苛酷環境に生存する生物の探索調査。