インタビュー04 岐阜大学教授 沢田 和秀

目的は何ですか?

「ドローン」あるいは「UAV」と呼ばれる、たくさんプロペラがついた、電子制御の飛行システムが流行っていて、しかもいろいろな場面で話題となっている。

流行っている理由を考えると、空を飛ぶすごいメカなのに操作が簡単でしかも安価だからある。それを使うと、空中から写真や動画を撮ることができて、少しだけ鳥の気分を味わうことのできる道具である。なによりワクワクする。実際のところは、ジャイロやGNSS受信機などの高度なセンサ技術と制御技術の融合が成しえる技のおかげである。

地盤工学を専門とする私が、現場で最も多く地盤とあい対するのは斜面災害である。斜面災害には、落石・土砂崩壊・土石流・地すべり・雪崩がある。災害が発生したときは、できるだけ速やかに対策を講ずることが最重要である。次に大切なのは、付近で同様の災害を起こさないことである。この二つについて、きちんと対応するには、できるだけ早く、しかも安全に詳しい調査をすることが 望まれる。このため、踏査が必要となるが、それには熟練した技術と時間を要する。

例えば、崩壊した斜面を調査するとき、崩壊地の周辺を調査するが、特に崩壊箇所より上部を重点的に踏査する。踏査する場所をどこにするか?どこを通れば安全に踏査するべき場所までたどり着けるか?こんなときにUAVの登場である。空中からを基本として、見る位置を変えるだけで、見えないところも考えられるようにできる武器である。人は、自分が知りうる8割の情報を視覚によって得ると言われている。UAVはその視覚情報を格段に増やしてくれる可能性をもつ道具なのある。私は、見たいためにUAVを使う。
 UAVは、ただ見る位置を変えるだけではない。写真測量の技術を活用することで、見たい場所の3次元形状を把握することができる。こうなると、見たい方向や見たい角度から対象を見ることができる。しかも、インターネットによって「全世界で同じものを見たい角度から同時に見る」こともできる。道具は、使い方と使い手次第でよりよい道具になる。

当たり前だが、UAVは飛行機なのでやはり落下のリスクがある。飛行体は落ちるという事実をきちんと理解した上で、目的を明確にして活用すれば、すばらしい道具としてさまざまな場面での活躍が期待できる。UAVは、法的な制限のもと、空中を移動し、写真を撮る程度のことしかできない。捉えたものをどう料理するかが重要である。それには、UAVをどう制御するか考えることが大切である。目的を明確にし、安全を確保した上でモラルを守って活用することで、UAVが使える道具として社会に認識される。新しい利用方法が発想されることによって、「見る」、「測る」道具から次のステージに上ることができる。

この道具をビジネスに活用するのもよい。それには、目的達成のためにその道具が必要なのか?をよく考えることが重要である。必要不可欠と決まったら、確実に目的を達成する準備が必要である。失敗のリスクを最小限にしなければならない。少なくとも、UAVが確実に制御されて高精細の写真が得られ、無事に手元に届く必要がある。つまり、法律を遵守し、安定した機体から確実に良い写真を撮影し、その写真を加工するという手順が必要である。法律(電波法、航空法)・機体(機械、動力、電気)・制御(プログラミング、GNSS、電波など)・データ取得(写真、その他センサ)・データ加工・モラルそして目的。これらがそろってはじめて、成果を得られるのではないでしょうか?

岐阜大学では、この有用な道具をきちんと使いこなして世の役に立てるために、UAV利活用研究会を3年前に設置しました。良い道具をより良くし、安全に確実に使いこなすことで、社会貢献したいと考える仲間が研究会に集まりました。ワクワクしながら、UAVの活躍の場を広げたいと思いませんか?
私は、「見たい」が目的です。

沢田 和秀

岐阜大学 工学部附属インフラマネジメント技術研究センター 教授
専門分野は地盤工学。